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海外で日本の「サバの塩焼き」が密かなブームになっていた…! なぜか、アフリカ諸国で大人気

なぜかアフリカで大人気!

旬のサンマが大不漁とあって、ほっそりした小型魚が少々高値で店頭に並ぶ一方、順調に漁獲されるサバとイワシに、ちょっとした異変が起きている。サンマと違って、年中どこかで漁獲され、近年は日本一の生産量を競うほど豊漁の両魚種。ともに刺し身だけでなく、煮ても焼いてもサンマに引けをとらないほどおいしいが、実は「嘘だろ?」と思わずにはいられない輸出の実態がある。

日本のサバやイワシは、エジプトやタイといった国に輸出されていたのだ。

農林水産省がまとめた2018年の水産物輸出入情報によると、サバは25万トンが輸出され、うちナイジェリア(5万1000トン)やエジプト(4万6000トン)が多かった。水揚げ日本一のイワシは、およそ10万トンが輸出され、タイ(約5万トン)を筆頭に、ロシアやモーリシャス(ともに約7000トン)へ渡っていた。

輸入商社や水産庁などに輸出先での消費について聞くと、アフリカへ渡ったサバは、現地の一般的な家庭料理として塩焼きや煮込み料理として人気があるという。もちろん料理店でも提供されており、香ばしく塩焼きにしたり、野菜や香辛料とともに「トマト煮」にしたりして食べられているようだ。

一方、イワシはどうか。輸出先1位のタイでは、サバなどと同様に缶詰に加工されるといい、このほかロシアやモーリシャスに輸出されたイワシは「漁業用の餌として使われることもある」と水産庁。イワシについては、残念ながら海外でおいしい料理にされて味わっているという話は、聞こえてこなかった。

筆者の個人的な感想だが、イワシの刺し身はなかなかのもの。さらに「小羽」と呼ばれる小さなイワシは最近、天ぷらでおいしくいただいたのが印象的だった。

ではなぜ、おいしい日本のサバやイワシがこれほど輸出されいるのだろうか。理由は単純でどちらの魚も国内であまり消費されないため、しかたなく輸出されているのが現状だ。輸出に回すのではなく、もっと国内流通の可能性を広げられたらと感じることが少なくない。

東京などの魚市場に入荷する「大羽(大型のイワシ)」

小型の魚は売り物にならない

「マサバは1匹500グラムないとだめ。100グラムに満たないイワシは売れないよ」。スーパーの魚バイヤーは、東京・豊洲市場(江東区)の水産卸売場でこう打ち明けた。量販店が仕入れない小型魚は、産地から魚を集荷する豊洲の卸売業者にとっても、扱いにくくて当然だ。

そもそも生の魚は今、鮮魚店にとって消費者に売り込みたくとも売り込めない状況だ。食べたらおいしいのは言うまでもないが、寄生虫・アニサキスのリスクのほか、ごみが出たり家庭でさばけなかったりするため、頭や内臓、「中には骨を全部取ってほしいというリクエストさえある」とスーパーの魚売り場担当者は語った。

マグロのような大型魚は「サク」として販売したり、刺し身用の一口サイズにカットし、大葉や大根の「ツマ」を敷いて店頭に並べたりするのは珍しくないが、サバやイワシなどの小さな魚はそうはいかない。サバなら「締めサバ」として、イワシならいったん冷凍しなければ、刺し身としては売りにくいのが現状だ。

生食用でなければ煮たり焼いたりする「加熱調理用」となるわけだが、そこでサバには500グラム、イワシには100グラムの壁が立ちはだかる。例外はあるが、魚は概ね大型ほど脂が乗っていいて、小さいほどパサついている。サバとイワシはまさにそうだ。重さが基準以下の小型魚は、「脂が薄く質が良くない」というイメージがついて回って、スーパーなど量販店から敬遠されてしまう。

ただ、両魚種ともに漁獲される分のほとんどが、壁をクリアできない小型魚。サバやイワシの主産地、千葉県銚子港の関係者によると、大型の巻き網漁によって多い日にはともに数千トンレベルで水揚げされるが、「大半が小型で鮮魚出荷できるほどの大型は、サバやイワシともにほとんどないこともある」(産地関係者)と打ち明ける。

ほっそりしていて脂の乗りが悪くても、刺し身や塩焼き用としてスーパーで販売されるサンマとは違って、サバやイワシは獲れても大半が生のまま出荷されずに、冷凍されてその後の行先を待つことになる。

日本国内でも敬遠される

ここで日本全体の漁業生産量を振り返ると、まず、2019年の総水揚げ量は、およそ420万トン。このうち、養殖を除く「天然もの」は、約320万トン。魚種別では、イワシが54万トンと最多で、次いでサバが45万トン。続いてホタテ貝34万トン、カツオ23万トン、スケトウダラ15万トンなどと続く。ちなみにサンマは4万6000トンでこの年、過去最低を記録した。

イワシ、サバは合わせて約100万トンと、天然魚漁獲量の3分の1ほどを稼ぐ日本を代表する魚なのだが、一方人気度は、サケ(サーモン含む)、マグロ、サンマ、サバ、ブリという順になっている(大手水産会社調査、2020年9月調べ)。サバは4位に入っているが、イワシは人気の魚とはいいがたい。

サバは缶詰人気も手伝って、比較的需要があるようだが、国内で消費されるサバは、大型で脂が乗っているノルウェー産が多いという現状も見逃せない。2019年に日本は約6万6000トンの冷凍サバを海外から輸入しているが、このうち9割近くをノルウェー産が占める。

豊洲の卸売業者によると「大型で脂が乗ったノルウェーサバは、日本市場にすっかり定着し、飲食店などから注文が絶えない」といい、築地(中央区)で「サバの味噌煮」が人気の和食店も、国産は使わず、ノルウェー産やアイスランド産などを仕入れている」と話していた。脂の乗りでノルウェー産が勝っているだけでなく「国産を仕入れた場合、身質にばらつきが出るので扱いにくい」(和食店店主)という。

それでは、生で流通せずに冷凍されることが多い国産の小型のサバやイワシはどこでどのように消費されているのか。もちろん国内で水産加工品として利用されたり、極端に小さい魚は養殖魚の餌などとして利用されたりしているが、それだけではなく、先述の通り、海外へと輸出されて現地で食べられているものもあったのだ。

自らを「サバニスト」と称し、サバ好きの輪を広げながら各地でイベントを実施してきた「全日本さば連合会」の小林崇亮会長は「ノルウェー産も確かにおいしいが、日本各地で獲れるサバもそれぞれの味わいがある。海外で需要があって輸出するのは仕方ないが、国内で地域ごとの食べ方も参考にしながら、小型のサバをもっと味わえるようなれば良いのだが……」と複雑な表情を浮かべた。

小林会長は「確かに小型のサバは東京などのスーパーではあまり見かけないが、水揚げされる地域の漁村では、小さなサバを庭先に干している光景を目にする。三重県の民宿では、そうしたサバを朝食に出してくれたことがあり、あぶって食べてみたらうまみが凝縮されていてすごくおいしかった」という。きっとアフリカでも、小林会長が堪能したように、日本産のサバをおいしくいただいているに違いない。

「漁業大国」は過去の栄光

かつて水産大国として、世界一の漁獲を誇っていた日本は近年、中国、インドネシア、インドなどに続いて9位。魚の水揚げ量は、ピーク時(1988年、約1200万トン)の3分の1に激減。この秋もサンマやスルメイカ、サケの大不漁が伝えられる一方、漁獲上位のイワシやサバが、大量に輸出される状況は続く。

若者の「魚離れ」が指摘される中で、漁業者をはじめ流通・消費に至るまで、水産関係者は、魚の資源管理の重要性を叫ぶのと同時に「魚食の拡大」を大きな課題に挙げる。同時に、コロナ禍での巣ごもり消費を見込んだネット販売のほか、家庭での水産物消費に期待する。

このように水産業界では、肉の人気に負けまいと魚のPRに躍起となっているが、消費者目線では「魚は肉より割高」との印象がぬぐえない。これから求められる日本の魚食とはどんなものか。世界で和食の代表格・魚食がもてはやされる今、大量に獲れる国産の小型大衆魚の消費をどう考えるのか、改めて問われそうだ。

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