川崎ブログ

業界情報

ファーストクラスは“中国産”

トリュフやフォアグラと並ぶ高級食材の代表格、キャビア。実は今、急速な勢いでその生産量を伸ばしているのは、お隣の中国。ヨーロッパの大手航空会社のファーストクラスでも中国産が採用されるまでになっています。対照的にかつての主要な産地では、中国に対抗していこうと懸命な挽回に取り組む生産者の姿がありました。
(上海支局長 柳原章人/テヘラン支局長 戸川武)

“世界の3分の1”を生産 中国東部の巨大拠点

中国東部、浙江省杭州の郊外に位置し、1000の島が浮かぶとされる「千島湖」。風光明美な湖の一角で、今、チョウザメの卵のキャビアが大量に生産されています。
湖にはチョウザメの養殖に適した山の天然水が流れ込んでいるとされ、養殖場の規模としては世界最大。

1年間にとれるキャビアは100トンと、世界で取り引きされる量の実に3分の1にあたるといいます。

キャビアの生産にあたっているのは、政府系の研究機関に所属していたメンバーが設立した会社。

当初、大量のチョウザメが死ぬなど失敗も続きましたが、試行錯誤を重ねて、今では数十万匹を養殖しています。

養殖場の人たちと柳原支局長(左から2人目)
養殖場の人たちと柳原支局長(左から2人目)
キャビアを作るには最低でも7年、高級品種のものでは20年もの年月がかかるとされ、人工繁殖してから一定程度の大きさになったチョウザメを湖でじっくりと育てます。

その後、陸地に作った生けすに移し、チョウザメに適した水温や水流に調節した環境でキャビアを作っているといいます。

消えた天然キャビア 養殖の時代に

カスピ海
カスピ海
かつてキャビアといえば、天然のチョウザメから採取するのが主流でした。

とりわけ有名な産地はカスピ海で、沿岸のロシアやイランがチョウザメを捕獲し、キャビアを世界各地に出荷していました。

ところが、1990年代以降、乱獲や環境汚染などの影響でチョウザメが激減。2010年からはカスピ海でのチョウザメの漁が禁止されたのです。

天然のチョウザメが減少するのに伴って、次第に世界各地でチョウザメの養殖が拡大。環境保護団体のWWF=世界自然保護基金によれば、2000年代初めは世界で取り引きされるキャビアの大半が天然のものでしたが、最近では90%以上が養殖のものになっています。

かつての主要産地は

かつて主要な産地だったイランのカスピ海沿岸の業者も、大きな変革を迫られています。
モハンマド・バハシャイさん
モハンマド・バハシャイさん
現地を案内してくれたのは、元漁師のバハシャイさん。以前はカスピ海で連日チョウザメを捕獲していましたが、禁漁を受けて養殖に切り替えました。
バハシャイさん
「競争相手の中国は大量にキャビアを生産している。同じやり方では勝てないよ」
生産量では勝ち目はないと感じ、品質を高めることに力を注いでいるというバハシャイさん。

世界市場で1%余りしか出回っていないとされる最高級のキャビアがとれる「ベルーガ」というオオチョウザメに限定して養殖にとりかかっています。

ベルーガ
ベルーガ
育てるのに10年以上かかるうえ、成長すると体重が数百キロにもなる大型種で、養殖に手間はかかるものの、世界的に高い評価を受けています。

バハシャイさんは、かつてのベルーガの生息域と同じ環境を作り出そうと、みずからの養殖施設にカスピ海からわざわざ水を引きこんでいます。

バハシャイさん
「高級で質のよいキャビアを生産し世界と戦う。再びイランのキャビアを世界市場で有名にしたい」
イランでは、対立するアメリカの経済制裁で海外送金が困難になるなど、ビジネス上のハードルもあるものの、そのことばには、歴史あるキャビア産地としてのプライドを感じました。

ヨーロッパの空の旅を中国産キャビアが彩る

ただ、中国産キャビアは、その量だけではなく、質でも国際的な競争力を高めようとしています。

この秋、北京の五つ星ホテルで開かれたキャビアの試食会。外資系ホテルの幹部やレストランのシェフなどが舌鼓を打っていたのは、中国産のキャビアです。

食の安全性の問題が国内外からたびたび指摘されている中国産の食品。

上述の「千島湖」で養殖を手がける会社は、品質の向上のため研究を重ね、中国人だけでなく海外の人からも高く評価されるようになってきているといいます。

ミシュランの星を獲得しているパリのレストランや、ドイツの大手航空会社のファーストクラスでも、この会社のキャビアを採用。ヨーロッパの空の旅を、遠くはるばる中国の湖で養殖されたキャビアが彩るようになっているのです。

中国で養殖を手がける韓磊さんと独ルフトハンザ航空の客室乗務員
中国で養殖を手がける韓磊さんと独ルフトハンザ航空の客室乗務員

イメージ変え 一般家庭にも

会社の設立から関わってきた韓磊さんは、中国産は危険で低品質だというイメージを変えたいと話します。
かつて中国産というだけで販売先などに品質を疑問視されたという韓さん。
今では海外からの視察も積極的に受け入れ、実際に試食してもらうことでイメージを少しずつ変えられていると自信を深めています。

今後の目標は、ぜいたく品の代表格であるキャビアを世界中の一般家庭に届けていくことだと話しています。

韓さんの会社のキャビアは、最も高いものでフランスやドイツ、それにアメリカなどの富裕層向けに100グラム27万円余りで取り引きされています。

一方、チョウザメの種類によって、100グラム1万2000円余りと価格を抑えたものも用意。すでに、日本も含めて30以上の国や地域に輸出しているということです。

手が届く価格に?

中国を中心に世界各地で生産されるようになったキャビア。

日本でも宮崎県や岡山県などでチョウザメの養殖が行われ、キャビアが生産されています。

世界的に養殖が拡大し、生産量が増加すれば、価格が下がるという指摘もあります。

手が届くような価格のキャビアを見かける日が来たら、その生産現場にも思いをはせてみるのもよいかもしれません。

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